血の雫
「ドロップ。
お前また、吸えていないだろ」
父さんの瞳が、真っ直ぐに僕を見つめる。
僕は「うっ」としか言えない。
「血の吸えない吸血鬼なんて、信じられない。
生きて行けないぞ」
そう。
僕、ドロップ・ムーンライトは吸血鬼なのに、血が吸えない。
その悲劇が呼びだす答えは、死だ。
「た、確かに生きて行けないけどさぁ。
な、何でそこで、に、人間界なんだよ…」
「人間界に行って、好きな子を作れ。
その子の血を吸えば、死ぬことはない」
「……ッ」
「お前がかつて辛い思いをしているのは、知っている」
そう。
父さんが言ったけど。
僕はかつて、人間界へ行った。
ムーンライトの決まりだったんだ。
そこで僕は……。
思いだしたくない。
僕は後ろを向いていた上半身を、前へ向けた。
そしてそのまま、溜息をつく。