血の雫
★学校
そういえば。
僕は疑問を覚え、夕食の際にアキナに尋ねた。
ちなみに今日の夕食は、“はんばーぐ”らしい。
「僕、これからどうすれば良いのかな?」
吸血鬼界には帰れないし、行く宛てもないし。
宇津木拓也には記憶喪失だと判断されたけど。
……嘘だけど。
「そのことなら問題ないわ。
ドロップはこれからも、あたしの傍で暮らしなさい?」
「アキナの傍で……?」
「ええ。
あたしの両親、海外で仕事していて、帰ることは滅多にないわ。
ドロップがあたしの家でこれからも暮らすことに、問題はないわ」
「良いの……?」
赤の他人の、僕の最大の秘密―――吸血鬼だということを知らないで。
素性のわからない男を、簡単に居候させても、良いのだろうか?
「ええ。
自分がどこの誰かわからない人を、追いだす真似はしないわ。
拓ちゃんはドロップが居候することに反対していたけど、あたしは何も思わないわ。
逆にドロップを追いだすことをする方が、あたしは嫌だわ」
反対されても?
アキナは…人間は、そんな簡単に誰かもわからない人物を泊めることが出来るのか?
僕は少し、人間を誤解している?
人間は皆、“あの子”のようだと思っていたのに。
アキナのように優しい人間もいるのか……?
「ありがとう。
じゃあこれから、改めてよろしくね」
「よろしく、ドロップ」
僕はにこり、と笑みを浮かべた。
でも、僕は簡単に信じない。
…信じられない、と言った方が正しいだろう。
傷つきたくないから。
僕はもう…信じることは、やめるんだ……。