血の雫
あたしは、ごく普通のどこにでもある共学高校に通っている。
今日からドロップも通うのだと思うと、とても新鮮な気持ちだ。
校門を通り過ぎると、校舎へ向かって歩いていた女子生徒たちが騒ぎ始めた。
「見て!あの人、かっこよくない?」
「本当だ!ハーフなのかな?」
「転入生みたいだよ!」
「ネクタイの色が青だから、2年生だ!」
やっぱりドロップは、目立つなぁ。
女子のどんどん広がっていく話し声に耳を傾けるあたしと違い、ドロップは慣れているのか相変わらず欠伸をしながら歩いている。
ドロップってやっぱり、前に行っていた高校とかでもモテて人気者だったのかな?
親しい友達とか…恋人とか、いたのかな?
でもそのことも、ドロップは忘れてしまっているのかな?
ドロップは漫画などで見かける記憶喪失者とは違い、覚えている部分が多い。
昨日拓ちゃんに色々質問攻めにあっていたドロップが答えられなかったのは、自分がどこから来てどこへ向かおうとしたのかと、自分の両親がどこにいるかだけだ。
年齢や自分の名前、誕生日などはちゃんと覚えているらしく、スラスラと答えていた。
ドロップは、自分が誰と親しかったとか、恋人とかがいたのか、覚えているのかな?
「アキナ」
「何?」
「どこへ向かえば良いの?」
「あ…校長室かな?
校長室はこっちだよ」
玄関から校長室へ向かう道を、ドロップは眠そうな瞳でキョロキョロと辺りを見渡していた。
すれ違う女子は騒ぎ、男子や教師は物珍しそうにドロップを見て通り過ぎた。
…本当ドロップって、目立つなぁ。