血の雫
「席はそうだなー。
木之上の後ろ、スペース空いているから、あそこにするか」
木之上…アキナだ。
先生は教室を出て行き、使われていないらしい椅子と机を、アキナの後ろにセッティングした。
「木之上。
ドロップの面倒、色々見てやれよな」
「はい」
僕は鞄を持ちなおし、前から後ろの席へ向かう。
すれ違いざま、アキナに「よろしくね」と呟いた。
アキナは控えめな笑顔で頷いてくれた。
ホームルームが終わると、一斉に女子が僕に集まってきた。
そして口々に自分の名前を名乗っていく。
僕は覚える気などないので、テキトーに頷いておいた。
そこで、僕は学ぶ。
笑顔でテキトーに頷けば、女子たちが喜ぶことを。
アキナには通じないけど、鬱陶しい女子たちには効果抜群だ。
笑顔で暫く女子たちに対応していた僕だけど。
さすがに笑顔を作るのにも疲れてきた。
本来は僕、静かに教室で本を読んでいるような人だったから。
こんなに誰かに囲まれるなんて、久しぶりだから。
慣れていないのもあり、僕は疲れてきたんだ。