血の雫
僕がスッと笑みを作るのをやめると、女子たちは途端に静かになった。
さっきとの空気の差に、自分たちの世界を作っていた男子たちまで静かになる。
「……アキナ」
僕が沈黙を壊すようにその名前を呼ぶと、アキナが手に本を持ったまま振り向いた。
僕が名前を呼ぶこと、予想外だと思っていたんだ。
「担任に、面倒見ろって言われていたよね」
「う、うん……」
「校内、案内してくれない?」
僕は立ち上がって、アキナの隣に行く。
アキナは女子たちの視線を浴びながら、ゆっくりと立ちあがった。
教室を出て行こうとすると、女子の1人が僕を呼んだ。
さっき、僕を質問攻めした女子だ。
「ドロップくん、木之上さんとどういう関係なの?」
「……僕の転入手続きをしてくれた人の、幼馴染」
「そう、なんだ…。
決して、カレカノって関係じゃないのよね?」
僕は小さく溜息をついた。
女子はそれに気がついていないみたいだ。
「例え僕とアキナがカレカノって関係だったとしても、君には関係ないと思うんだけど。
僕が誰を好きになろうとか…関係ないでしょ」
僕はアキナの手を引き、今度こそ静まり返った教室を出た。