血の雫
☆アキナside☆
教室でいつものようにお気に入りの短編小説を読み返していると。
後ろから、綺麗な低い声で名前を呼ばれた。
そして今、あたしはドロップと手を繋いだまま、廊下を物凄いスピードで歩いている。
普通なら足がもつれて転びそうなスピードだけど、不思議と転ばない。
ドロップから離れたくないと、思うからだろうか…?
歩いている途中、何度も先生たちとすれ違った。
そしてその度に、授業が始まるから教室へ戻るよう言われた。
でも、ドロップは聞く耳を持たないで、一心不乱に歩き続けている。
ドロップは校内のことなんてわからないだろうに、どこへ行くつもりなのだろうか?
「ドロップ、どこへ行くの?」
聞いてみると、ドロップは突然停まった。
あたしはドロップの背中に鼻をぶつけた。
少しだけ痛む鼻をさすりながら、あたしより背の高いドロップを見上げる。
ドロップはあたしを見た後、可愛くはにかんだ。
「わからないや…」
「え?
行く場所もわからないで、歩いていたの?」
「うん…。
無我夢中で…アハハ」
はにかむドロップは、さっき教室で見たドロップとは違う。
さっき女子に話していたドロップは…別人のように思えたから。