血の雫







あたしが信じられないでポカンとしていると、チャイムが鳴った。




「ドロップ教室に戻ろう?」




成績の悪いあたしは、授業は真面目に受けないと駄目だ。

ドロップの手を握り、あたしは教室へ戻ろうとする。

だけど、ドロップは止まったままで、動こうとしなかった。




「ドロップ……?」

「……ごめん、アキナ」




ドロップは俯いたまま、あたしの手を離した。

そして教室とは正反対の方向へと歩きだす。




「ドロップ?
早く行かないと、遅刻しちゃうよ?」



歩いて行くその背中に話しかけるものの、ドロップは停まらないで行ってしまう。

あたしは思わず追いかけ、その手を握り、ドロップを停めた。




「ドロップ……?」

「……アキナ」

「どうしたの?」

「……僕、わからないんだ………」




俯いているから、表情はわからない。

だけどその声は、震えていた。







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