血の雫
「僕、少しどこかで休んでから教室に戻るよ。
だからアキナは、戻っていて良いよ」
ドロップは繋いでいたあたしの手を離すと、再び歩きだす。
「待って!」
「アキナ……?」
「あたしも迷惑じゃなければ、一緒に行っても良いかな?」
「どうして……?」
「教室に戻るってドロップは言うけど。
教室への戻り方、わからないでしょ?
あたしが案内してあげるよ」
嘘じゃない。
だけど、本当の理由はそれじゃない。
「……良いよ」
「ついでに良い場所教えてあげるよ!」
「どこどこ?」
あたしは再びドロップの手を握り、歩きだす。
前に拓ちゃんから、この学校でサボるのに良い場所を教えてもらったんだよね。
普段はサボらないあたしだから、その時は必要ないことなのにって思っていたけど。
ドロップのためになるんだから、聞いていて良かったよ。
「アキナ、待ってよ!」
「早く早く!」
ドロップが先ほどより明るい笑みを見せてくる。
あたしも負けない笑みを作った。
ドロップがさっき見せた、今にも泣きそうな笑顔。
あたしはそんな笑顔、見たくない。
そんな笑顔のドロップを、放っておけない。
だからあたしは、ドロップの傍にいることを望んだ。
ドロップに、もう二度と、孤独な思いをしてほしくないから。