血の雫
「……アキナ」
僕は上目遣いで僕を見つめるアキナの瞳を見つめた。
僕と違い茶色い双眸が、僕を映した。
「アキナが迷惑じゃなければ…一緒に座っていても構わないだろうか?」
「……うん、良いよ」
言いあうのを止め、僕らはくっついた状態で座ることにした。
アキナの体温が僕に伝わって来て、不思議とあったかくなった。
「アキナ、あったかいね」
「ど、ドロップこそ…」
普段、人種も住む世界も違う僕らがこうしてくっつくことは、あり得ないだろう。
吸血鬼界を出るときは嫌だって思っていたけど、今では少し、父さんに感謝かな。
暇つぶしで人間界に行ってこいとか言う、無茶苦茶な人だけど。
「ドロップ…あたしといるのは、疲れないの?」
「アキナは、別だよ」
アキナといると、自然と落ち着く。
夏らしい生暖かい風が、僕らの間を通って行く。
何の音もしないその時間が、僕は心地良いと感じた。
「アキナの傍にいると、安心する…」
シャンプーの香りが漂ってきて、僕は瞳を閉じた。