血の雫
★いきなりのハプニング
「……うっ………」
人間界へ降り立ったのは良いものの。
僕は大きな木の下で、荒い呼吸を繰り返していた。
降りたのは、昼間だった。
もう少し、時間を考えておけば良かった。
吸血鬼界はいつでも夜だから、人間界にある昼間という存在を忘れていたよ。
その上、季節。
吸血鬼界に季節なんて存在しない。
だから、甘い考えで降りてしまったんだ。
何で僕、吸血鬼のくせに、
夏の時期に降りてしまったんだろうか!?
夏真っ盛りの昼間って、太陽が苦手な吸血鬼にとっては、まさに地獄。
何で僕、降りて早々こんなに疲れているんだろうか?
僕は常に携帯している、トマトジュースを取り出して飲む。
血が吸えない吸血鬼の僕にとって、トマトジュースは必須。
普通吸血鬼界でトマトジュースを飲むのは、まだ牙の生えていない生まれたての赤ん坊だけのはずなんだけどね。