血の雫







アキナに案内され、僕は教室へと戻った。

予想通り、先生に呼びだされて怒られた。

アキナは普段授業をサボらない優等生だから、先生は怒るというより、アキナがサボった理由を聞いていた。

どうやら先生は、アキナが人間関係などに悩み気分転換に授業をサボったのではないかと考えたらしい。





「ごめんなさい先生。
あたし、何も悩んでいないので、大丈夫です!」

「…なら、良いんだが……」




先生はまだアキナが何か抱えているのではないだろうか?と疑っていたけど、僕らを解放してくれた。

ちなみに僕は、

「転入初日から何をしているんだ?」とそれだけ怒られた。

何が理由であれ、転入初日からサボったことは、やっぱり悪いことだよな。

僕も謝っておいた。





「ドロップ、体調は大丈夫?」

「平気だよ。
アキナを巻きこんでごめんね」

「ドロップが心配だったから。
あたしが勝手にサボったことだから、ドロップは気にしないでね?」

「……ありがとう」




優しいアキナに、僕はお礼を言った。




アキナの血を吸わないといけない。

僕は見た目がいくら人間に似ていても、吸血鬼なんだ。

それは、もう嫌なくらい、自覚している。




だけど。

アキナを傷つけたくない。

アキナの首に、牙が食い込んだ後を、作りたくない。

そう思ってしまうんだ。




どうしてだろう?

僕は初めての感情に、戸惑いを覚えた。









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