血の雫







「……あっ!」




顔を上げたアキナが突然、大声を出した。





「どうしたの?」

「見て見て!」




アキナが嬉しそうに、指をさす。

僕はその指の先を眺めた。




「……わぁ………」




アキナの指さす先には、大きなオレンジ色の丸いモノがあった。

空も同じくオレンジ色に染まっていて、とても綺麗な光景だった。

吸血鬼の世界はいつも夜で、こうやって空が色を変える所なんて見たことがない。

僕は初めて見る圧倒される光景に、感動した。





「太陽をあんなに大きく見たの、初めてだよ!」




隣でアキナが子どものようにはしゃいでいた。

あの大きいのが、吸血鬼の苦手な太陽?

嫌だとずっと思っていた太陽なのに、あんな綺麗な姿になるんだ。

夏だから相変わらず気温は高いけど、綺麗な太陽と大空から僕は目を離せなかった。









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