血の雫







人間界に来て、色々なことを知ったのと同時に、色々なことを学べた気がする。

人間は、“あの子”みたいな人ばかりではないことも教わった。

嫌っていた太陽の綺麗な姿も見ることが出来たしね。




それに…アキナがいる。





「ドロップ?どうしたの?」

「ううん、何でもないよ。
アキナ、今日の夕ご飯は何?」

「今日はね、肉じゃがにしようかな!」




アキナが嬉しそうにスマホを片手に、坂を下って行く。

今僕らがいるのが坂道の頂上辺りだから、あんなに綺麗に見えたのかもしれないな。




「ドロップ!
早く行こうよ!!」

「待ってよアキナ!」




僕は重い鞄をかけ直し、先行くアキナを追いかけた。






人間界に来て、良かったかもしれない。

アキナに会えたし。

いずれ傷つけなくては行けない人だと、わかっている。

だけど、僕はアキナを傷つけることなんて出来ない。

アキナにはずっと、笑っていてほしいんだ。




例えそれが、

叶わない願いであっても……。








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