血の雫
この尖った先で、僕はアキナを―――…。
「……ッ!」
覚えている。
アキナの血の味も。
もっと欲しくなって食い込ませた牙の感触も。
アキナの柔らかい皮膚も。
アキナを、傷つけた。
絶対にしたくない、と思っていたのに。
簡単に、傷つけてしまった。
アキナが裁縫針を刺して、流れた鮮血。
真っ赤な血を見て、僕は自分で自分が持つ“吸血鬼”としての欲望を抑えることが出来なかったんだ。
頭では、わかってた。
いけないことだ、と。
アキナを傷つけ、怖がらせることはわかっていた。
アキナ以外のクラスメイトに見られることも、わかっていた。
それなのに、自分を抑えることが出来なくて。
欲望のままに、僕は動いた。
それだけでもいけないことなのに。
あろうことか、もっと欲望を満たしたいと思うなんて。
……アキナに、牙を立ててしまうなんて。