血の雫







戻りたくない。

戻りたくない。

人間界にいたい。

アキナの傍にいたい。

あの教室で、笑っていたい。







「……無理だな、それは」

「父さん!?」




隣に座ったのは、父さんだった。

久しぶりに見るその姿。

父さんも…吸血鬼、なんだ。





「ドロップ。
お前はあの少女と人種が違う。
もし正体がバレていなくても、友達以上の関係にはなれない」

「……ッ」

「今ならまだ傷も浅いだろう。
お前はあの少女の血を吸い、立派な吸血鬼になったんだ。
自分の本来住むべき世界に、帰りなさい」

「…………ッ!」

「今すぐに、とは言わない。
別れの挨拶や、準備もあるだろ」




父さんは洋服についていたマントで、自分を隠す。

するとどこにでもいそうな烏(カラス)へ変化し、どこかへ飛び立ってしまった。






僕はその場で、声を殺して泣いた。








< 92 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop