血の雫
戻りたくない。
戻りたくない。
人間界にいたい。
アキナの傍にいたい。
あの教室で、笑っていたい。
「……無理だな、それは」
「父さん!?」
隣に座ったのは、父さんだった。
久しぶりに見るその姿。
父さんも…吸血鬼、なんだ。
「ドロップ。
お前はあの少女と人種が違う。
もし正体がバレていなくても、友達以上の関係にはなれない」
「……ッ」
「今ならまだ傷も浅いだろう。
お前はあの少女の血を吸い、立派な吸血鬼になったんだ。
自分の本来住むべき世界に、帰りなさい」
「…………ッ!」
「今すぐに、とは言わない。
別れの挨拶や、準備もあるだろ」
父さんは洋服についていたマントで、自分を隠す。
するとどこにでもいそうな烏(カラス)へ変化し、どこかへ飛び立ってしまった。
僕はその場で、声を殺して泣いた。