血の雫








校内には生徒も先生も誰もいなかった。

誰かとすれ違うこともなく、僕は自分の教室の前に立った。

前も後ろも扉が閉まっていたから、僕は躊躇いもなく後ろの扉を開けた。

こっちの方が、自分の席に近いからね。






「……えっ?」





誰もいないと思っていた。

だから驚いたんだ。

―――クラスメイトが誰1人欠けることなく、静かな教室内にいたのだから。

しかも全員アキナの席の近くに集まっていた。





クラスメイトは全員、僕を見ていた。

僕は俯いて、皆からの視線を受けなかった。





「……ドロップ」




席に座っていたアキナが、僕の所へ来た。

僕の前に立ったアキナは、そのまま俯いてしまった。

僕が傷つけた人差し指には、白き包帯が巻かれていた。

その包帯を見て、僕はズキッと痛みを感じた。





そして、自分が憎らしくなった。

アキナの包帯に滲む血を見て、一瞬でも吸いたいと思ってしまったのだから。

やっぱり僕は、吸血鬼なんだ……。







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