血の雫
「もう、知っているんでしょう?
僕が、人間じゃないって」
アキナが驚いたように目を見開く。
クラスメイトを見ると、同じような顔をしていた。
「僕、確かに見た感じは人間だよ。
でも、僕は人間じゃない。
……吸血鬼だよ、僕は」
知っているんだよね、皆。
隠す必要…ないよね。
「僕の家って、吸血鬼界では必要な家なんだ。
その次期当主になる予定の僕が血が吸えないって駄目でしょ?
だから父さんに言われて、僕は人間界へ来たんだよ。
最初は目的達成できるかなって不安だったんだ。
でも、思ったよりアッサリ達成できたよ。
やっぱり僕は、人間じゃない。
いくら人間のフリしても、駄目なんだよね。
僕は、どう見ても―――吸血鬼、なんだ」
僕は黙って僕の話を聞いていたアキナに、自分の顔を近づけた。
アキナは驚いてビクッと反応していた。
ふんわりとシャンプーのにおいが来たけど、気にしない。
「アキナには本当に感謝しているよ。
何にも疑わずに僕のこと家に泊めてくれて。
ご両親が仕事で海外に行っているから、寂しかったの?
数日でも僕と一緒にいられて、楽しかったでしょ?
アキナの血、美味しかったよ。
本当は持ち帰りたいところだけど、やめておくよ。
今ここで吸うことも、僕には簡単なんだよ……?」
ニィ…と僕はクラスメイトにもアキナにも見えるよう、牙を出した。
男子は目を見開き、女子は小さい悲鳴をあげていた。