たとえどんなに。
翌日久しぶりに佑馬と会った。

デパートの4階で私たちは抱き合った。

佑馬はあったかくて、

その場所に戻ってこれてうれしかった。

何をするでもなく

ただ隣に座って話す。

なにをして遊ぶでもなく

ただ隣にいるだけ。

そんななか、佑馬の目に私の手が映った。

驚いたように、

でも悲しそうな顔を隠し彼は泣いた。

私が傷つけた自分の手。

死の世界の境に触れたこの手を。

彼は見てしまった。

なにもないようにふるまって隠し切れていると思っていたこの手は

惜しくも服から出てしまった。

彼は涙を流し私を抱きしめた。

「ごめん、」

声を震わせ私を強く抱きしめる。

ああ、彼を泣かせているのは私なんだ・・・

彼が泣いているのに理由が2つあることは

なんとなくわかった。

でも、その理由の一つが私だと思うと

やっぱり辛かった。
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