たとえどんなに。
坂を下り始めた私を

みんなが見つめていた。

視界に入るその片隅に

傘を持って友達と話す靖の姿

そうだよね・・・

心配なんてしないよね。

悲しくて。

泣いた。泣いた。

それでもばれない。

私を打ち付ける雨がかき消してくれるから。

萌李が坂の下で私を呼ぶ。

琴が私のもとへ傘を持って駆け付けた。

手渡された傘を私は

地面に投げつけた。

驚いた琴をほかっておいて

私は雨の中坂を歩き続けた。

私を待っていた大軍は

誰も私に声を掛けようなどしない

男子の集団は

「あれ、みられたんじゃね?」

「靖、謝ってこいよ」

「やだよ、んなの」

集団の沈黙の中

男子の話は驚くほど

聞こえている。

見たよ。聞いたよ。

でも、謝られてもきっと許せない。

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