たとえどんなに。
細い路地にさしかかった時、

竜たんは私を読んだ。

「なあ、亜夢。」

振り返る私を彼は引き寄せた。

「え・・・」

戸惑いの声を上げるだけで、

状況を理解するには時間がかかった。

「亜夢・・・」

悲しそうな声を頭上から落とす竜たんに不安を覚える

竜たん泣いてるの?

顔を上げると竜たんの顔が近くにあった。

「んっ・・・」

彼は私に無理やり唇を押しつけた。

私は壁へと追いやられ、逃げ場をなくす。

手の自由を封じられ

ひたすら涙を流した。

電灯の光で竜たんの髪は金色。

まるで、カズ先輩のようだった。

怖い。

そう思っても体が動かない。

体はまるで機能を失ったように。
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