たとえどんなに。
亜夢のそばで。

壁を挟んで隣で泣く亜夢。

私は彼女を尊敬する。

どれだけつらいことがあっても

それを内に秘め、彼女は笑う。

いとも楽しそうに笑ってくれる。

そのわけもわかっている。

だから、私たちは声をかけれない。

あの笑顔が偽りに変わったのはいつごろだろう

無理して笑うようになったのはいつ?

気付いた時には偽り。

無理をした笑顔に変わっていた。

気付けなかった自分が悔しい。

悔しくて悔しくて。

泣きはらした目を隠し、

彼女は私の部屋に入ってくる。

そして、私にもたれて夢の世界へ向かう

肩に乗った頭をなでながら

私は本の世界へ浸る。

いつからはじまったのか私たちの日課。

その時口にする亜夢の寝言。

「佑馬・・・」

涙を流しながら口にするその言葉。

亜夢を苦しめるその言葉。

本から彼女に視線を落とし

私は昔を思い出す。
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