たとえどんなに。
母が亡くなったあと、

私は父を憎んだ。

父が母に暴力を振るったから、

母は言いだせなかった。

葬式で泣く父を誰より憎んだ。

父には泣く権利なんてない。

葬式が終わり母の部屋を掃除したとき

一冊のノートが出てきた。

母の日々の出来事をつづった日記。

『今日も増えたあざ。

 あの人は仕事がうまくいかない。

 でも、あの人には才能はある。

 いつかうまくいくときがくる。

 その時支えれるように

 今から支えないと。

 あの人も昔私を支えてくれたわ。

 彼には私しかいない。

 彼のためにも、梢のためにも。

 私は笑わなくてわ。』

ところどころ涙のある日記を

私は夢中で読み進めた。

母の思いを私はたどった。
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