たとえどんなに。
「ねえ、亜夢・・・」

私におびえたように声をかける。

そんなに怖いなら話さなければいいのに

「なに。」

本におとした視線は変えないまま

私は感情のない声を琴に投げつけた

「あの・・・・

 靖のこと・・・」

手に乗った本をバタンととじ、

勢いよくいすからたつ。

大きないすの音に

琴は肩をすくめる。

私は琴の横を無言で通り過ぎる。

ぱしっ

乾いた音がして

私の手の自由がさえぎられる。

「何、萌李?」

何?何?

いまさら何の用よ。

「琴が話そうとしているんだから

 ちゃんと聞いてあげたら?」

疑問文なのに答えは一つに限られている

そんな文章。

うん、以外許さない。

そんな瞳が私に向けられている。

なに?

むかつく。

にらまれたって怖くもない。
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