たとえどんなに。
緊張した面持ちで開会式を終え

私たちはホテルへと戻った。

「ここからが苦の世界か・・・」

私の放った言葉は誰かの耳に届く前に

空気中に消えた。

「はぁ」

おもい足を無理やり動かし

琴と萌李について行く。

三年と後輩では部屋が分かれる。

そして、その部屋で始まるものは

ただ一つ・・・・

わかりきった答えだ。

旅先のホテルの部屋。

女子の話題と言えば・・・

恋バナ。

私は話したくない。

そんな私の気持ちをくみ取ってくれると

うれしいんだけど・・・

そんな奇跡は起こるはずもなく。

「ねー、琴。
 
 琴好きな人いるんだっけ。」

ベッドに寝転がる萌李が琴に問う。

顔を真っ赤にして、

萌李を見つめる琴じゃ答えなんて

聞かなくてもわかる。

「いるよ。

 ・・・・付き合ってる。」
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