たとえどんなに。
靖に振られて2カ月たった10月

ハロウィンの夜。

私は毎年のようにクッキーを作った。

引退したクラブに久しぶりに顔を出し

見慣れた顔の友達たちに

袋を1つ1つ手渡しする。

その中に私が今まで追ってきた背中が。

靖・・・

引退したはずの靖が練習に来ていた。

渡したい。

そう思ってしまった。

笑う笑う。

昔と変わらない笑顔を振りまく。

楽しそうで。

人を引き付ける靖の笑顔。

久しぶりの練習をベンチで見学する。

久しぶりの靖。

やっぱり好きだな・・・

靖をあきらめた・・・

いや違う。

あきらめようとしたときから伸びた髪は

肩までさしかかっている。
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