たとえどんなに。
帰り、電車を待つ。

遠くに靖らしいシルエットの影が見えた。

自転車に乗った3人組。

本当は何となく気づいていた。

みんなで笑っているときも、

反対側を似ている人が通っていたから。

それでも知らないふりをした。

わかってしまったら。

認めてしまったら、

またそっちに気持ちが向く気がしたから

ああ、これで終わりだ。

なぜだかわからないけど、

そう感じた。

目に溜まった涙を声を押し殺し流した。

靖色に染められた携帯を手に

私は彼の背中を見送った。

手の中の携帯のメモリー

靖の思い出が刻まれたフォルダー

開くと懐かしい靖。

大好きだった靖がたくさん。

「さようなら」

誰に届くでもないその声を

写真の中の靖にかけると

私はその写真をすべて消した。

もう、リセット!
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