【完】好きになれよ、俺のこと。
おずおずと頷いたのと、〝それ〟は同時だった。
「ひなちゃん、遅くなってごめ……」
突然、耳に届いた声。
ドアの方に目を向け、私は思わず目を見開いた。
だってそこには───呆然と立つ安堂くんの姿があったから。
「ひな、ちゃん……」
「っ…」
反射的に、柊くんから距離をとる。
だけど安堂くんは、くるっと背を向けたかと思うと、歩いて行ってしまう。
「あ、安堂くん……っ」
一瞬見えた安堂くんの顔。
あんな悲しそうな顔は……初めて見た。
きっと、私があんな顔させちゃったんだ……。
私は柊くんの方を見た。
「ごめんね、柊くん……っ。
私、安堂くんのとこ行くね!」
柊くんが何か言いたそうな顔をしたけど、私はそれに気がつく余裕なんてなくて、気づけば走り出していた。