【完】好きになれよ、俺のこと。
「待って……!」
誰もいない放課後の廊下に、私の声が響き渡った。
前方を歩く安堂くんが立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
その瞳は切なすぎるほど、深く暗い色をしていた。
「安堂、くん……?」
そう呟いた次の瞬間、手首を掴まれ、ぐいっと近づく安堂くんの顔。
ドキンッ……
「な、なっ……」
か、顔が近いよ……っ。
いつもと違う安堂くんの雰囲気に、心臓が早鐘を打つ。
そんな私を見つめて、真剣な瞳の安堂くんが口を開いた。
「…なんで他の男に抱きしめられてんだよ……」
「え……?」
「あいつじゃなくて、俺だけを見てろよ。
早良にもう、その笑顔見せないで」
怒気を含んだような、掠れた安堂くんの声。
その瞳は、切なさと苦痛の色に染まっていて……。