【完】好きになれよ、俺のこと。
だけど……走っても、安堂くんの姿はどこにも見当たらない。
「安堂くん……っ」
もう、帰っちゃったんだ……。
階段の踊り場まで来たところで、私は立ち止まった。
下を向いていると、涙が一粒、床に落ちていくのが見えた。
……あれ、私なんで泣いてるんだろう……?
分からない。
分からないけど、なんだかすごく、心が痛いの……。
それ以上涙が溢れないように、腕で目を覆う。
「うっ……。
ごめんなさい、安堂くん……。
でも私……安堂くんと一緒にいたい……」
ほろほろと口をついて出る言葉は、紛れもない私の本音。
「安堂くんが隣にいてくれないと寂しいよ……」
ガランとした、誰もいない階段の踊り場に私の声が響き、そして静寂に吸い込まれて行く。
なんでだかは分からないけど、安堂くんが離れていってしまうのが、すごくつらい。
安堂くんがどこか遠くへ行ってしまう、そんな気がするの……。