【完】好きになれよ、俺のこと。
「うぅっ……安堂、くんっ……」
涙をこらえながら、一歩踏み出す。
でも、涙で視界が歪んでいたからかな。
私は、目の前が階段だということに気が付かなかったんだ。
───あっ…!!
そう思った瞬間には、もう遅かった。
足が滑り、身体が前に傾く。
「きゃっ……!」
お……落ちる!
ぎゅっと目を瞑った時、後ろから腕を引っ張られて。
そのまま強く引き寄せられ、私の身体は後ろから、何かに包み込まれた状態になっていた。
あれ……?
私、落ちてない……?
それと同時に、ふわりと甘い香りに包まていることに気がつく。
この甘い香水の香りは……
もしかして───
「安堂くん……」
間違いない。
この香りは安堂くんだ。
安堂くんが、落ちる私を後ろから抱きとめて助けてくれたんだ……。
やっぱり、私のヒーローだ……。