【完】好きになれよ、俺のこと。
安堂くんの表情を見れなくて、ぎゅっと目を瞑ったまま俯いていると、ずっと黙っていた安堂くんの声が降ってきた。
「……は?」
それは、絶望に染まったような悲しい声で。
安堂くんが、私の手を掴む力をぐっと強めた。
「どいつだよ、好きな奴って」
「……っ」
安堂くんだよ。
そう言えたら、どんなに幸せかな。
でも、私は君に嘘をつくって決めたから。
「安堂くんには、関係ない……っ!」
好きって想いが今にも溢れ出てしまいそうで。
それを全部抑え、今出る精一杯の声で拒絶の言葉を放った。
その時───。
ぐいっと手を引かれ、頭の後ろに手が回されたかと思うと、強引に唇が重ねられていた。