【完】好きになれよ、俺のこと。
でも、何故か反射的に追いかけていて。
数メートル先に転がっていたキーホルダーを拾い上げたのと、安堂くんの声が聞こえたのは同時だった。
「ひなちゃん、危ない…!!」
え……?
不意に視界に飛び込んできた、地面に写った私の影の上に広がっていく、大きな何かの影。
「……っ!」
はっとして顔を上げると、建造中のビルから数本の鉄骨が落ちてくるのが見えた。
……うそ……っ!
一気に全身から血の気が引いていくのが分かった。
スローモーションのように降ってくる鉄骨から逃げようと思うのに、腰が抜けて動けなくて。
そんな私に容赦なく大きくなる鉄骨の影。
つ、潰される……っ。
ぎゅっと目を瞑った次の瞬間、私の身体は誰かに押されて突き飛ばされていた。