【完】好きになれよ、俺のこと。
「……陽向ちゃん!」
バタバタと走ってくる足音が聞こえて顔を上げると、那月さんが髪を乱して走った来たところだった。
「那月さん……っ」
「叶翔が事故に遭ったって……!?」
「わ、私を庇ったせいで、安堂くんが鉄骨の下敷きになっちゃったんです……っ」
嗚咽を漏らして泣いていると、温かいものが頭の上に置かれた。
顔を上げると、隣に座った那月さんが頭を撫でてくれていた。
那月さんの瞳は、不安に揺れているけど、それ以上に強く真っ直ぐで。
「陽向ちゃんのせいじゃない」
「な、つきさん……っ」
その手の温もりは、安堂くんの温もりを思い出させて……。
ぽんぽんって、優しく頭を撫でてくれた安堂くんの笑顔が浮かぶ。
お願いです、神様……。
どうか、どうか
安堂くんを助けてください……。
祈るようにぎゅっと目を瞑った時、
バチンと手術中のランプが消えて、術衣を着た先生が出てきた。