【完】好きになれよ、俺のこと。
その時、病室のドアが開き、看護士さんが入ってきた。
「医師から話があるようなので、ご親族の方は来ていただけますか?」
「……分かりました」
那月さんが静かに立ち上がり、私の方を見た。
「陽向ちゃん、叶翔のこと頼むね」
「はい……」
看護士さんに続いて那月さんが病室を出て、病室には私と安堂くん、二人きりになった。
静かな空間に、心電図の音と呼吸器の音だけが鳴り響く。
「……安堂くん……」
椅子に座って、力のない安堂くんの手のひらをそっと握りしめる。
「安堂くん……。
ごめんね……私のせいでっ……。
痛かったよね……?」
だけど、声が届くことはないんだ……。
「……っ」
握りしめた手に、ぽつりぽつりと涙が落ちた。