【完】好きになれよ、俺のこと。
突然聞こえた声に振り向くと、そこには叶翔が立っていた。
「叶翔……!」
でもその顔は、いかにも怒ってるっていうのが分かるほど、すっごく不機嫌で。
「あ? なんだおまえ。
関係ねぇ奴は引っ込んでろよ」
お兄さんがそう言い、叶翔に背を向け、また私の手を引いて歩き出そうとした時。
バシッ……
歩き出すよりも先に、お兄さんの手を叶翔が掴んだ。
「俺の彼女に手ぇ出すとか、おまえら死にたいの?
早くその汚い手を離せよ」
「……え、あ、あのっ……」
叶翔の威圧に、さっきまで口の悪かったお兄さんが一変、蚊の鳴くような声を上げた。
だけど……
怯えていたのは、私も一緒で。
だって、だって……
叶翔、こ、怖すぎるよ……!!
叶翔がこんなに怒ってるの、初めて見た…!