【完】好きになれよ、俺のこと。
『お母さんの方は?』
『……相変わらず。
帰ってなんかこねぇよ』
そして、俺の家族の事情を知っているのも、担任と桜ちゃんだけ。
『そう……。
夜とか大丈夫なの?』
『姉貴が深夜にコンビニのバイト始めたから、夜は最近ずっとひとり』
『ひとりなんて……』
その時、保健室の時計が鳴った。
『あっ、いけない。
もうこんな時間だわ』
突然パタパタとスリッパを鳴らして走りだし、机の上のファイルをまとめ始める桜ちゃん。
『なんか用あるの?』
『職員会議よ、職員会議!
ごめん、行ってくるから、飛鳥さんのこと頼むわね!』
そう言って、桜ちゃんは保健室を出て行った。
相変わらず嵐みたいだな、あの人。