【完】好きになれよ、俺のこと。
ほとんどの生徒が帰り、薄暗くなった廊下。
降りしきる雨の音は、学校中に鳴り響いている。
あー、寒ぃ。
寒さに身を屈め、腕をさすりながら昇降口に出た時、ふとこちらに背中を向けて立つ人影を見つけた。
その子は、俺の足音に気づくとこちらを振り向き、そして笑った。
『叶翔くん!』
耳心地の良いソプラノのその声は、聞き覚えがあって。
まさかと思いながら、
『陽向…?』
そう呟くと、確かに傘を持った陽向が、そこにはいた。