【完】好きになれよ、俺のこと。
と、その時。
「飛鳥陽向さんっていらっしゃる?」
突然、自分の名前が耳に飛び込んできた。
「ん?」
その声がした方に目を向けると、教室のドアのところに、綺麗な女の人が立っていた。
あの人が呼んだに違いない。
わわ!
あんな綺麗な人が、私なんかに何の用だろう?
しかも会ったことないはずなのに……。
だけど、呼ばれてるんだから早く行かなきゃ!
「こ、ここにいますっ」
そう声を上げて、お弁当箱を片付け始めた時。
なっちゃんに、ガシッと手首を掴まれた。
「……陽向、行かない方がいいよ」
なっちゃん……?
いつになく、真剣ななっちゃんの表情に、思わず手が止まる。
「どうしたの……?」
「あの人、なんか怖いよ」
怖い……?
私には美人な女の人にしか見えないけど……。