わたしは…
その一軒建ての古いガラス引き戸の家のときに、一人で地面に絵を描いていた。

顔は覚えていないのだが、父が絵を描いていた私に「何してんねや?」と低い声で質問をした。

「私は絵ー描いてんの」と言いながら黙々と絵を描いていた。

すると父は「おいで」と一言いい、父の黒い車に歩いていった。

私は「なんやろ?」と思いながら、父の元に駆け寄っていった。

すると父はなにやらごそごそと探していた。

しばらくて「ほれ、やるわ」といって白いチョークのようなものを私にくれたのだ。

私にはわからず「何これ?」と聞いてみると、父はそれを手に取り、地面にくるくると描いたのだった。

私はそれが地面にかけるものだとしり驚いた。

何も言わずに父は私にそれを手渡した。


それを使い黙々と絵を描いたのだった。

その姿を父は遠くからみつめ、少し微笑んでいた。

父は無口でサングラスをかけており、
見た目は怖かったが、何かと私を気遣ってくれる優しいひとだったと思う。

絵を描くことに夢中になっていた私は、父が車に乗りどこかへいってしまったことにはきずかなかった。

しばらくして日もくれてきたために父にお礼を言おうとしたが、父はいなかった。

家に帰り玄関にそれをおいて、また明日描こうと楽しみにしていた。

母はこれに気づき「何これ?拾ったの」ときき、「ううん、お父さんにもらったの」と言った。

母は、それ以上何も言わなかった。

次の日、おいた場所には、それはなく鳴っていた。

母に聞いてみたが「知らない」と答えたのだった。

だがそれは、母がしたことだろうと言うことはわかっていた。

父と母は、仲が悪く一緒にはすんでいなかった。

それは、私には当たり前のように思っていたため気にはしなかったのだった。

まあ、仲が悪かったことが原因で引っ越しをしたのだろうと言うことは、大きくなってその事が異常であると理解することができる年齢になってからのことだった。


引っ越しの荷物を家に入れて整理している間私はまた石を探して絵を描いていた…
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