イジワルな先輩との甘い事情
『だったらそれは、先輩に失礼ですし……それに、無責任すぎます。
先輩を好きになったのは古川さん自身なのに、少し躓いたら全部古川常務のせいなんておかしい』
思った事をそのまま言っただけだったけれど。
気に入らなかったのか、古川さんは強い眼差しで睨みつけて。
『柴崎さんだって、父親が専務じゃなければ北澤さんに選んでなんてもらえなかったくせにっ。
私も柴崎さんも同じじゃない。なのに偉そうに私に指図しないで。
それに、北澤さんだって私の事まんざらでもなさそうだったけど? 私の事、すごく優しい眼差しで見てくれてたし』
見下ろすような笑みを浮かべて、そう続けた。
少し強い冷たい風が吹き付けるたび、肌にぴりぴりと痛みが広がっていくのを感じながら見ていると『何か言い返してみたら?』と、挑発をされたから。
俯いて『私は……』と、呟くように言ってから、ぐっと顔を上げた。
『私は、例え選ばれなくても、それを父のせいになんてしません』
『嘘言わないで。専務の娘って立場利用して近づいたくせに、今更……』
『だって、全部、私が必死になってした事の結果だから、誰のせいにもしない。
もし振られたって、その事実は私と北澤先輩と、ふたりだけの事だから……先輩と共有できた事を他の誰にも分けてなんてあげません。
全部私のものだから、私が受け止めます』