イジワルな先輩との甘い事情


『社内にいる以上、君が何か問題を起こした時、常務に迷惑がかかるって事を自覚した方がいい』

正しくも厳しい事を好きな人の口から言われて唇を震わせながら顔色を悪くする古川さんを、ただ見ている事しかできなかった。

それが、先週の土曜日の事だ。

「少し、びっくりした。先輩があんなに厳しい事言えちゃう人だって思わなかったから。
しかも、古川さんが先輩の事好きだって知ってるのに、見るからにショック受けてたのに、あんな事……」

先輩の言った事は間違いじゃない。古川さんの〝つまらない男だった〟みたいな暴言はあんまりだったし私だって言い返したくなるほどだったのだから、先輩が言い返したって当然だった。
それでも、そのドライさに少し驚いたと言うと、松田が「そうか?」と首を傾げた。

「北澤さんだって誰にでも無条件で優しいわけじゃないんだし、古川さんに言った事も、早くキリついてよかったっていうのもよく分かるけど」
「でも、私は優しい先輩しか知らなかったから……」
「それは、柴崎には特別優しいってだけだろ。普通、大事なヤツとそうじゃないヤツとは態度変わると思うけどなー。
古川さんなんか特に、ちゃんと言っておかないと何するか分かんないし」
「……松田も?」

松田だって誰にでも優しくしている気がして聞くと、意外にも頷かれて驚く。

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