イジワルな先輩との甘い事情
「俺だって好き嫌いあるもん。彼女じゃなくても、友達とかで好きなヤツには優しいかもしれないけど、嫌いなヤツにはそうじゃないし。
だから多分、古川さんと同期とかでも、古川さんには優しくしないと思う。
少なくとも月一で食べ放題付き合ったりはしないし」
「なんか意外……」
「んー、だってさ、優しくしてやれる量なんて、限られてるじゃん。俺、そんな余裕もって生きてるタイプでもないし。だったら好きなヤツにうんと優しくしてやりたいから。
冷たいみたいだけど、そうじゃないヤツの事まで気にしてらんねーじゃん。線引きっつーかさ」
そうなんだ……と呟くみたいに言ってから、少し考える。
私は、ただ先輩は優しい人だとか、女の子にひどい事を言わない人だとか、勝手に思い込んでいたけれど。
それってもしかしたらただの一部分ってだけであって、実際にはもっと色んな部分があるのかもしれない。
なんとなく、先輩は完璧な人だってイメージが強いから、土曜日みたいな先輩を見ると意外でびっくりしちゃうけど……。
あの後、先輩は『驚かせちゃってごめんね』って眉を寄せて優しく微笑んでくれて、その顔がいつもの先輩だったからほとんどの違和感は飛んでいったけど……今もまだ少し残ってる。
先輩があんな態度取るのが信じられなくて。