イジワルな先輩との甘い事情
「北澤さんがハッキリした態度取ったのがそんな意外か?」
長いこと黙っていたからか、松田が「北澤さんだって人間だろー」って呆れたみたいに笑うから、笑顔を返した。
「それはそうなんだけど。でも……そうだよね。好き嫌いなんて誰にでもあるもんね」
「まぁ、みんな社会人だし、社内では色んな関係もあるし、好きも嫌いも露骨には表さないだろうけどな。北澤さんだって、今回は社内の人間相手だったからやんわり対応してたんだろ、きっと」
「うん。そうなんだろうけど……でも先輩は、いつも余裕そうだし、古川さんと一緒にいるところ何度も見たけど、少しも嫌な感じ出してなかった気がするけど……。
多分、先輩が古川さん苦手だっていう事を知ってても、先輩の態度からはそういうの見つけられないと思う。私から見る先輩って完璧だから」
先輩はいつも平然としているから態度とかで判断するのってすごく難しそうだ。
ってよりも、私なんかにはできなそう。
そう言って笑うと、松田は「そうかー?」とまた首を傾げた。
そんな事言うって事は、松田には先輩の気持ちが態度から分かるって事なのかな。
だったら教えて欲しくて、松田に話しかけようとした時。
「花奈」って、私を呼ぶ先輩の声がした。
声のした方に視線を移すと、少し先の街灯の下に先輩の姿があった。