イジワルな先輩との甘い事情
「軽いってあんなに噂になってるのに松田くんが好かれる理由が分かった気がする」
「そうですね。へらへらしてるけど、すごく優しくて気遣いしてくれるから。私の周りでも、松田を嫌いな人はいません。
園ちゃんも、なんだかんだからかいながらも、恋愛しない松田を心配して毎週のように合コンセッティングしてるし」
クスクスと笑いながら話すと、先輩は少し黙った後、ぽつりと言う。
「松田くんがライバルにならなくてよかった」
「……え?」
独り言みたいなトーンに引っかかって聞き返すと。
先輩は「俺は多分、松田くんみたいにいい男じゃないから」と、困り顔で微笑んだ。
こんな風に言う先輩が珍しくてじっと見つめていると、苦笑されてしまう。
「俺は、花奈が思ってるほど完璧じゃないから。きっとそのうち幻滅される気がする」
「そんな事ないです……っ」
ムキになって言い返すと、先輩はそれには答えずに「そういえば」と話題を変える。
「風邪は大丈夫? 移らなかった?」
「あ、はい。全然……。私、昔から風邪とかって滅多に引かないんです。
先輩は……その、ちゃんと治りましたか?」
あんな事しちゃって悪化しなかったかな、と思いながら聞いた私に、先輩が「おかげさまで」と笑う。
その後、「俺も看病してあげたかったんだけど」と言われて……風邪を引けない自分を恨んだのは言うまでもない。
誰か、私に風邪の引き方を教えてください……。