イジワルな先輩との甘い事情
告白の返事ひとつに色々考えている先輩に感心しながら、ホッとして胸を撫で下ろした。
古川さんの告白を断ったりしたら、出世に響いちゃうんじゃないかなって思ってたから。
安藤さんも、古川さんの事を追い詰められたら何でもしそうって言ってたし、私もそんなタイプに見えていたから、正直そこが心配だった。
常務に言いつけて先輩の仕事に響いたりしたらどうしようって。
でも、考えてみれば、私が心配するような事を、先輩が考えていないハズもないんだと、なんだそっかと息をつく。
「安心しました」と笑うと、先輩も同じように笑った後、「黙っててごめん」と浮かべていた笑みを崩した。
「花奈に言っても変に心配させるだけだと思って、だったら黙ってた方がいいと思ったんだ。
花奈がやきもち焼いてくれるのは可愛いけど、今回は相手がちょっとマズかったから」
「常務の娘……だから、ですか」
聞くと、先輩が困り顔で微笑む。
「常務の娘と会ってたとかそういうのを花奈が知ったら、俺が花奈といるのも花奈の親が専務だからだとか、そういう変な事に結び付けられて不安にさせるのは嫌だったし」
図星をつかれて「あ……」と声をもらすと、先輩が自嘲するような笑みを浮かべて続ける。
「でも結局、花奈には知られる事になっちゃったけどね。
古川さんが、まさか社内であそこまで露骨に行動に表すとは思ってなかったから」
苦笑いを浮かべた先輩が座るように言うから、ダイニングテーブルから椅子を引き出して座ると、先輩も向かいに座った。