イジワルな先輩との甘い事情
そんな事があってから、先輩は大学内で会うと話しかけてくれるようになって、そのうちになんでかお昼とかも一緒に食べてくれるようになった。
どういう事?!って騒ぐ友達に、ただ先輩が親切なだけで全然そういう関係じゃないって答えたら、それでもいいから羨ましいって妬まれたのが懐かしい。
入学当初から憧れていた人だったけど、先輩と過ごす時間に緊張したりはあまりしなかった。
ううん。緊張はしてたんだろうけど、それも心地よかったというか。
先輩が作ってくれる雰囲気が柔らかいから、話しやすかったっていうのが一番だと思う。
先輩が私なんかをなんで構ってくれるのかは分からなかったけど、一緒に話すのが楽しかったから、理由は特に聞いたりしたことはない。
今思えば、この頃から私は憧れではなく、恋愛感情として先輩を見ていたのかもしれない。
だから、話しかけてくれる理由や、ご飯を一緒に食べてくれる理由を聞かなかったのかもしれないと思う。
好きだからって理由以外が返ってきたらショックを受けてしまうから。
そして、絶対にそんな理由じゃないって事を分かっていたから、無意識に聞かなかったのかもしれない。
だけど、先輩が私に抱く感情が恋愛じゃなくても、それでも一緒にいたかったのは確かだった。
好きだからっていうのはもちろん、先輩の周りの雰囲気が大好きだったから。
あの頃からずっと、柔らかくて優しい空気の中にいるのが、私の幸せだった。
失いたくなくて、でも想いを届けたくて〝都合のいい女でいいから〟なんて、あんなズルい告白しちゃうくらい、好きで大切だった。
その雰囲気がここ最近歪に感じるのは……多分、気のせいじゃないと思う。