イジワルな先輩との甘い事情


……あ。まただ。
部屋の空気が少し歪んだ気がして、今何か変な事を言っちゃったのかなって考え直してみたけど、何も思い当らない。
だけど多分、私が空気をおかしくしちゃったんだって思ったから、謝ろうと「あの……っ」と口を開いたと同時に、「そういえば」と話題を変えられてしまった。

「松田くんとはあれから何もない?」
「あ、はい……」
「実は、昨日、松田くんと社内で会って少し話したんだ。松田くんも今話した長井工業主催のクリスマスパーティに出るらしくて――」

元通りの和やかな雰囲気に戻った事にホッとしながらも、なんとなく落ち着かないのは、最近、こういう事が多い気がするからだ。
先輩が何か言って、その返事を私がして……その瞬間、少しだけ空気がおかしくなる。
先輩は何も言わないけど……多分、思ってる事があるんだ。

一体、何なんだろう。
私が何かしちゃってるのかな……。

「花奈、おいで」

だけど、先輩がいつもみたいに優しく呼んでくれるから。
安心して、笑顔を浮かべながら、ソファーに座る先輩に近づいた。

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