イジワルな先輩との甘い事情
考えてみればあの告白した時から……ううん、好きになった時からずっとそうだった。
都合のいい女でいいなんて、最初から恋人なんて無理だなんて、勝手に私が距離を作ってたんだ。
私が……先輩を勝手に遠ざけて見てたんだ。
今までの色んな思い出が頭の中を駆け巡っていって、いつも先輩の気持ちを置き去りにしていた自分に気付いて……自然と眉がしかめられていた。
なんてひとりよがりな恋だったんだろうって。
『俺は、花奈が思ってるほど完璧じゃないから。きっとそのうち幻滅される気がする』
古川さんとの事があったすぐ後に、先輩が言っていた言葉。
あの時から先輩はずっと私のそういう部分に気付いてたんだ。……ううん。もしかしたら、もっとずっと前から。
先輩に寂しそうな顔させているのは、私だ。
先輩に言葉を呑みこませていたのは……私だったんだ。
「ごめんなさい……」と思わずこぼした私を見た先輩が、ふっと笑う。
「今更幻滅したって言っても離してあげないけどね」
困ったように微笑んで言われた言葉に思わず笑うと、「なに笑ってるの」と優しく咎められたから、素直に答えた。
「いえ……だって、先輩が少し近づいたみたいで嬉しかったんです」
静かな夜の空気の中、ふたりの吐息が白く色づく。
足を止めた先輩が、呆れたような笑みを浮かべて私を見た。