イジワルな先輩との甘い事情
「だって、同じ目線って言ったじゃないですか。
遠慮とか、そのせいで自分も先輩も苦しめてたんだって分かったから……もう、やめます。
ずっと、先輩といたいから」
憧れじゃなくて。違う世界じゃなくて。
私はずっと、同じ世界で先輩に隣にいて欲しいから。
ふっともれた優しい微笑みに、繋いだままの手が熱い。
たくさんの星がキラキラ眩しい。
「そんなに俺が好き?」
「好きです。……ちょっと意地悪で、でも優しい先輩が」
「俺も好きだよ。例え、花奈が俺を好きじゃなくてもね」
そう言った先輩が、くん、と繋いだままの手を引く。
胸に軽くぶつかって止まった私に「もっとも」と先輩が続けた。
「花奈は俺が好きで好きで仕方ないんだから、その例え話は成立しないけど。
だからやっぱり、俺は、俺を好きで堪らない花奈が好きだって表現が合ってる」
「そうですね。間違いありません」
いつか、安藤さんに言った言葉をなぞる先輩と、顔を合わせて笑う。
人通りも車の通りもない、細い道。
不意に近づいてきた先輩に目を閉じると、優しいキスが落ちて……胸がキュッと締め付けられて言葉が溢れた。