イジワルな先輩との甘い事情
「古いヤツから箱詰めするんだろ?」
「うん。一番上の段から抜いてもらえれば大丈夫だと思う」
「了解」と軽く返事をした松田が二冊ずつ伝票を抜くから、それを下で受け取る。
それを二十回くらい繰り返したところでひとつの段ボールがいっぱいになったから、次のを用意して、それも同様にして埋めていった。
段ボールの横と上に、伝票って文字と、入れた伝票の日付を書いてから、埃のついた手をパンパンとはたく。
「これ、第一倉庫に運ぶんだろ? 重いし持ってくよ」
さすがにそこまでは申しわけないって言うよりも先に、松田が重ねた段ボールを持つから、「ごめんね」と言いながら書庫のドアを開ける。
本当は運ぶ用の小さいカートも一台あるんだけど、それは書庫にあったり第一倉庫にあったりと、気まぐれな場所に置いてあるから使いたい時には近くにない事が多い。
前に使った人が、そのまま置いていくケースが多いからそうなっちゃってるんだろうけど……。
きちんとした置き場があればいいのにねと、松田と話をしながら、同じフロアにある第一倉庫に向かった。
書庫と違って窓のない第一倉庫のドアを開けて、室内の電気をつけると頼りない灯りが小さく灯る。
電気をつけてもまだまだ薄暗い部屋は古い紙の匂いがして……しかもかなり広いから少し不気味だ。
灯りが小さいんじゃなくて、部屋に対して灯りが圧倒的に足りていないんだと思う。
建物内はすべて効いているハズの暖房の効果を感じないのも、広くて薄暗いからかもしれない。
空気の冷たさに、ぶるっと身体が震えた。